2019/11/07

高度プロフェッショナル制度のメリット

高度プロフェッショナル制度のメリット

高度プロフェッショナル制度とは

働き方改革で当初かなり騒動となった高度プロフェッショナル制度(高プロ)。働き方改革法案施行からしばらく経ち話題に上がらなくなりましたが、改めて高プロについて再確認します。

高度プロフェッショナル制度のメリット

高度プロフェッショナル制度で期待されているメリットとして、少ない労働時間でありながら高い報酬が約束される可能性があります。

労働生産性の向上

日本の企業の労働生産性の低さは常々指摘されてきており、行政を挙げて労働生産性を向上し、国際競争力を高めようという動きがあります。現状の国内企業の傾向として、残業をすれば成果に関係なく報酬が支払われるため、仕事が遅い人の方がより報酬が多いといった問題があります。
しかし、高度プロフェッショナル制度においては、労働時間に報酬が左右されないため、効率よく短時間で成果をあげようとするモチベーションから、労働生産性の向上が期待できます。加えて、仕事が終わっていても退社することができない、といったような日本企業の悪習を断ち切る意味合いも含まれています。

ワークライフバランスの実現

企業人材の多様化の観点から、女性が働きやすい労働環境の整備に注目が集まっています。
そんな中、高度プロフェッショナル制度においては、出社や退社の時間が自由に決められるため、育児や介護などと仕事の両立が可能となり、ワークライフバランスの実現が期待されます。ただし、柔軟な働き方が実現されるのは一部の理想的な場合に限るとも考えられ、以下のデメリットに挙げる残業の横行とも表裏一体であるのが実情です。

子育てや介護などでオフィスワークが難しい人には適した働き方?

労働時間は賃金に反映されないという働き方ですから、考え方によってはメリットが大きいといえます。ただ、成果は出さないといけません。
一定の時間外に出て働かなくても、子育てや家事、介護の空き時間を利用して働くことができるため、子育てや介護などでオフィスワークが難しい人には適した働き方です。

無駄な残業代が不要

残業をすればするほど報酬が増える、という矛盾が解消され、企業にとっては人件費のコストカットを図ることができます。

成果と無関係な給与設定による不公平感が是正される

仕事の進行が遅い労働者の場合、必然的に労働時間が長くなります。成果が上がらないにもかかわらず労働時間だけが加算される従来の給与設定は、不公平感を生み出します。
高度プロフェッショナル制度は、労働時間ではなく成果物と給与設定が連動しています。仕事ができる労働者は、短時間で仕事を終了でき、それにより自由時間を生み出し、さらに給与も保証されます。労働時間による給与設定から生じる不公平感が是正されるというメリットが、企業と労働者双方に与えられます。

そもそもなぜ成立したのか

高度プロフェッショナル制度は、2007年にアメリカでも実施されているホワイトカラーエグゼンプション制度として法案が検討されました。
しかし、過労死の原因となるとして提出には至りませんでした。その後、見直されながら検討、廃案を繰り返し働き方改革の法案の一つとして、2018年に成立しました。

賛成派の主張「ワークライフバランスの向上」

賛成派は、働き方自体を変えることで労働生産性の向上だけでなく、労働者自身のワークライフバランスが向上する効果を挙げています。
テレワークや在宅勤務などで会社に出勤しなくても働くことができるワークスタイルの登場です。知的労働の部分が大きい職業であれば、自宅に居ながら仕事をしたり、通勤時間をずらして働いたりすることが可能になります。

反対派の主張「残業代ゼロ制度」

反対派の主張は様々ですが、要約すると合法的に残業代がカットされるため残業代ゼロ制度にすぎないのではないか、ということです。政府はそれに対し、厚生労働省の調査を元に裁量労働制においては、一般労働者よりも平均労働時間が短いことを根拠にしていましたが、このデータが不正確であったことが判明した経緯があり、正当性が揺らいでしまいました。

高度プロフェッショナル制度と裁量労働制との違い

裁量労働制は、労働時間の長さとは関係なく労働の質・成果によって報酬を定めることを可能にしている制度です。
高度プロフェッショナル制度との共通点として、報酬を労働時間ではなく、労働の質や成果物で評価を定めています。 対象職種や業種に違いはありますが、労働時間ではなく成果物によって報酬を定めることは2つの制度の共通点です。

残業代の有無

高度プロフェッショナル制度は、労働基準法の定める法定労働時間と休憩・休日の規制が一切適用されません。
一方裁量労働制は、労働時間の計算を実労働時間ではなく、あらかじめ定められた「みなし時間」によって行います。また22時以降翌朝5時までの深夜労働が発生した場合、深夜手当など割増賃金が発生します。

法定休日に労働した場合も割増賃金が発生します。一部残業代の有無に関して、高度プロフェッショナル制度と裁量労働制はその性質が大きく異なります。

対象労働者の年収の違い

高度プロフェッショナル制度では、年収1075万円を目安にした労働者に限って制度が適用されます。対象労働者の職種や業種も、 金融商品の開発業務、アナリスト業務、コンサルタント業務、研究開発業務に限定されています。

一方、裁量労働制の場合、年収要件は設けられていません。
対象職種や業務も、研究開発、出版事業の取材や編集、システムコンサルタント、公認会計士や弁護士、証券アナリストなど19業務、および事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査および分析を行う労働者と幅広いのが特徴です。

まとめ

高度プロフェッショナル制度は、労働時間でなく成果物で報酬を設定する制度で、対象は特定の高度な専門的職種や業種に限定されています。制度は労働基準法の適用外となるため時間外手当などは一切出ません。
しかし、労働者は自分で時間を自由に使って能力を存分に発揮できますし、企業はそれによって生産性が向上し、収益が改善する可能性も高くなります。

どう言われてもこの制度の最終的な目標は柔軟な働き方の実現と労働時間の見直しであるのには変わりないので、制度の効果的な活用を労使で考えてみるのはいかがでしょう。

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