2019/01/11

残業時間の上限規制のポイント

残業時間の上限規制のポイント

労働基準法改正

労働基準法が改正され、4月より時間外労働に罰則付きの上限が設けられました。ただし、中小企業については、2020年からの適用になります。また、建設の事業、自動車運転業務、医師については、当分の間(5年間)適用を猶予されます。新技術・新商品等の研究開発業務については、適用除外となっています。

時間外労働できる上限時間が、1ヵ月45時間、1年360時間になります。今までも1ヵ月45時間以内、1年360時間以内と、労基署等から指導を受けた事業所も多いと思いますが、今までは「限度基準告示」で定められたものでした。
それが今回、法改正によって、「告示」から「罰則付きの法律」に格上げされました。ですので、1ヵ月45時間、1年360時間を超える協定を結ぶことは、法違反ということになりました。 また、今までは年6回については、特別条項を結ぶことで1ヵ月及び1年間について上限のない協定を結ぶことができました。実質、青天井でした。しかし、今回の法改正によって、たとえ特別条項を結んだとしても、1ヵ月の上限は100時間未満、1年の上限は720時間となりました。
また特別条項による1ヵ月100時間未満の時間外・休日労働ですが、たとえ単月で100時間未満であったとしても、2~6ヵ月のそれぞれの平均がすべて80時間以下でなければなりません。

36協定

36協定は、正式には「時間外労働・休日労働に関する協定届」といい、労働基準法第36条に該当することから、「36協定(サブロク協定)」と呼ばれています。業務の繁忙期や緊急対応などによって、法定労働時間を超えた労働や法定休日に労働する場合も考えられるため、あらかじめ企業と労働者(労働組合、もしくは労働者の過半数を代表する者)が書面で36協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届出を行います。これによって、法定労働時間を超える残業が認められるようになるため、36協定の届出をせずに時間外労働をさせることは労働基準法違反となります。

36協定経過措置

改正法の施行に当たっては、 経過措置が設けられています。この経過措置によって、施行前と後に跨がる期間の36協定を締結していた場合には、その初日から1年間に限っては、その協定は有効となります。

残業代、有給消化のポイント

割増賃金

時間外労働関連で、中小企業がおさえておくべきポイントとして挙げられるのが、「月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)」になります。大企業ではすでに2010年より適用されていますが、2023年4月1日からはこれまで猶予されていた中小企業も例外なく対象とされます。 時間外労働の上限規制と共に、月60時間超の割増賃金率増への対応を考える上では、企業において「そもそも残業が生じない体制」の整備を検討する必要があります。

一定日数の年次有給休暇の確実な取得

使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないことになります。

取引先との環境の改善

自動車運転従事者の時間外労働の原因として「人手不足」をあげるものが多く、また12月に深夜業が多く、また、ストレス発生原因として、バスは長時間労働、タクシーは売上・業績等、トラックは精神的な緊張ストレスが最多となっています。トラックでは、企業における取引慣行として荷主から要請される事項として、「荷主の都合による入出庫の手待ち時間」「契約外の作業」を挙げるものが多かったとされています。 長時間労働の是正には取引環境の改善も非常に重要です。労働時間等設定改善法では、事業主の責務として、短納期発注や発注の内容の頻繁な変更を行わないよう配慮するよう努めることと規定されました。
様々な取引上の制約が存在する場合があることから、長時間労働の是正は事業者側のみの努力での解決が難しく、取引関係の在り方も含めて改善や長時間労働の抑制に向けた取組の実施が必要となります。業種・業態の特性に応じて発注条件等の適正化を促進する等、取引関係者の発注の仕方等に問題がないのか、といった見直しも検討する必要があります。

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