パート・アルバイトの働き方改革

パート・アルバイトの働き方改革

パート・アルバイトの働き方改革

2019年4月より施行された働き方改革関連法。時間外労働の上限規制や有給休暇取得義務化などが話題になっていますが、パートアルバイトにも実は影響があることをご存知でしょうか?
パート・アルバイトの働き方改革の影響などを紹介します。

働き方改革の影響

働き方改革では非正規雇用の待遇面の改善が行なわれることになっています。これはパート・アルバイトも対象となっております。同一労働同一賃金など元々派遣社員などの非正規雇用向けの施策のように報道されていましたが、パート・アルバイトも同じ非正規の枠で保証されます。

同一賃金同一労働

2020年4月から、中小企業は2021年4月から、。パートタイム・有期雇用労働法が施行されます。これは、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差を禁止する法律です。同じ企業の間で、基本給や賞与を含めたすべての待遇において、同じ能力や同じ貢献度を持つ労働者であれば、正社員とアルバイトの間で同一の賃金を支給すべきと定めています。厚生労働省はこの考え方を同一労働・同一賃金として、ガイドラインを定めています。
同一労働・同一賃金ガイドラインによれば、正社員とパートタイム労働者の賃金決定基準に違いがある場合の根拠として「正社員とパートタイム労働者では将来の役割期待が異なる」という主観的説明では不十分。職務内容や職務内容・配置の変更の範囲が同じ場合は、差別的な扱いをしてはいけないと定めています。賞与についても、会社への貢献度に応じた金額が支給される場合は、正社員とアルバイトが同一の貢献度の場合、同一の賞与を支払わなければなりません。
また、待遇に関する説明義務の強化も盛り込まれています。アルバイトで働く人は、正社員との待遇差の内容や理由について、事業主に対して説明を求めることが可能で、事業主にはその説明義務があり、説明を求めた労働者への不利益な取り扱いも禁止されています。

有給義務化の対象

今までパート・アルバイトに有給がないあっても取りづらいという風潮がありました。 今回の法改正により、年次有給休暇が10日以上の労働者に対し年5日以上の有給休暇を与えないと、企業に罰金が課せられます。
これはパート・アルバイトも対象です。有給休暇付与日数が10日以上という条件を満たせば対象になります。
10日の有給休暇が付与される条件は、半年間継続して雇われ、全労働日の8割以上を出勤している場合。原則として、半年間勤務すれば10日の有休が付与され、取得義務の対象となります。

ただしアルバイトなどで所定労働日数が少ない場合は、付与される有給休暇の日数は、所定労働日数に比例して計算。たとえば、1週間の所定労働日数が4日で、かつ1週間の所定労働時間が30時間未満の場合、10日の有給休暇が付与されるまでの継続勤務年数は、3年6ヵ月。週3日の場合は5年6ヵ月となります。勤務日数に応じて、取得義務化の対象となるまでの勤務期間が異なるので注意が必要です。

残業時間の上限規制はアルバイトにも適用

残業時間の上限規制は正社員だけでなく、アルバイトの場合も、これを超えた労働は時間外労働とみなされ、月60時間までの時間外労働は通常の賃金の2割5分以上、月60時間を超える時間外労働には5割以上の割増賃金が支払われます。
また、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年間6ヵ月までという上限も、正社員だけでなく、アルバイトとして働く人にも同様に適用されます。

まとめ

学業や子育て、本業などを理由にフルタイムで働くことを選ばない人が、能力を発揮できる余地は多くあります。人材が不足する中、労働者だけでなく企業にとっても、パートタイムで働く人がより活躍できる環境を整えることは急務です。
まだまだ改善の余地がある働き方改革ですが、これまで労働市場にいなかった女性や高齢者の方にとっては、働くきっかけにつながる可能性があります。

公務員の働き方改革の問題点

公務員の働き方改革の問題点

公務員の働き方改革の問題点

公務員の働き方改革の課題

公務員の働き方改革に関して進んでいるところもありますが、役職や環境によっては十分進まない、解決が困難な場合があります。

国家公務員は激務

国家公務員の場合、仕事が多岐にわたるほか、国会関連の業務もある為かなりの仕事量となっております。 各省庁残業時間ランキングのトップ3は、財務省、文部科学省、経済産業省で、いずれも月70時間超えという結果となっており、過労死ラインの80時間に迫る勢いです。
また労働基準法適用外の関係もあり、サービス残業が横行している状態となっております。

長時間労働の原因は国会対応

国会対応とは、国会で質問を受ける省庁大臣らの答弁を作成する重要な業務で、質疑の前日に議員から質問通告を受けると、各省庁に答弁が割り振られて答弁作成が始まる。質問通告」終わる平均時刻は午後8時19分、各省庁への割り振りが確定する平均時刻は午後10時28分となっており、それから答弁作成が始まる為、当然徹夜になります。
各省庁の国家公務員の場合この様な対応を行なわなくてはならない為、現実的に厳しいのが現状です。国会で余計な議論や足を引っ張る様な事がある場合状況が悪化することが多いです。

進まないペーパーレス化

行政関連ではいまだに紙資料が中心となっており、民間企業の場合デジタル化して効率よくなっているものを印刷、資料として使用しております。 二度手間担っている場合が多く、とても効率がいいとは言えません。地方自治体ではペーパーレス化の動きが一部でありますが、実現にはまだ時間がかかりそうです。

公務員の副業

労働生産性の向上に向けて推奨される副業に関しては、民間企業以上に、公務員が副業することに対する抵抗感が強いようです。これは信用失墜の禁止、守秘義務、職務専念の義務という、公務員の副業禁止三原則といわれる規制があるからです。
現在は地方自治体などで徐々に緩和の動きが出ており、本業である公務員以外の収入で認められているのは、不動産運用・農業・太陽光発電などに限られており、規模や収入金額が一定以上を超えて自営とみなされた場合、任命権者の許可がなければ認められません。

まとめ

国家公務員の激務や、行政機能の観点から公務員の働き方改革の実現はまだまだ時間がかかりそうです。
働き方改革に取り組もうとする動きはあっても、元々やることが多かったり緊急を要する場合などどうしても激務になりがちです。 人事院勧告でも指摘されているように、公務員の働き方改革を実現するには、民間でも行なわれているネットワークを活用した業務の合理化や柔軟性のある環境が必要かと思われます。

公務員の働き方改革の事例

公務員の働き方改革の事例

公務員の働き方改革の事例

働き方改革による長時間労働是正の動きは民間だけでなく、公務員などにも広まりつつあります。 実際にどの様な動きがあるでしょうか。

公務員の働き方改革動向

人事院が国家公務員の残業時間規制を改正

2019年2月1日には人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)として、正式に一部改正、改正労働基準法と同様、2019年4月1日から施行されることになりました。
具体的には、超過勤務命令(時間外労働)の上限時間を、1か月について45時間かつ1年について360時間までと規程を改正。他律的業務の比重の高い部署に勤務する職員に対しても、1か月について100時間未満かつ1年間720時間までという、明確な上限が設けられました。

フレックス制の導入

実は2016年より国家公務員全職員に対してフレックスタイム制が導入済みとなっております。地方公務員については、国家公務員の様にフレックスタイム制の全体拡充はされていませんが、各自治体において時短勤務制度など一部でのみフレックスタイム制が本格的に導入している自治体も少なくありません。
働き方改革では、柔軟な働き方がしやすい環境整備においてフレックスタイムの導入が推奨されており、多くの一般企業ではフレックスタイムが導入されているのにも関わらず、実際には稼働されていない現状があったため、これを踏まえ、働き方改革の一環として国家公務員へのフレックスタイム制度導入に総務省が踏み切りました。

テレワークの導入

国家公務員にも積極的にテレワークを導入できるように取り組みがされています。国家公務員にテレワークが導入されれば現場での拘束時間が少なくなり、付随した通勤時間なども短縮されるので、負担が軽減され生産性の向上や長時間労働の是正にも繋がります。
しかし、機密性の高い業務を行なって関係上テレワーク業務での情報漏洩などのリスク管理の課題も残っています。

地方公務員の働き方改革

公務員の働き方改革は国家公務員の方でも民間に追従する様に少しづつ行なわれておりますが、地方でも働き方改革を積極的に行おうとしている地方自治体が目立つようになってきています。

副業解禁の神戸市

これまで、法律で禁止されていることもあり、公務員のダブルワークは基本的に自治体から禁止されてきました。 しかし、こうした考え方は政府が推進してきた働き方改革と矛盾をなす内容であり、多くの自治体で公務員のダブルワークを認めるかどうかが議論されてきました。
そんな中兵庫県神戸市で、2017年4月より、神戸市は職員が副業を行うことを認めると発表しました。
副業先はNPO団体など公共性の高い組織に限定されており、すべての副業が容認されたわけではありません。また、勤務時間外に限る常識外の報酬額を受け取ってはいけないなどの条件も課せられています。

川崎市の働き方改革のプログラム

神奈川県川崎市では多様化する住民のニーズに応えるため、自治体のサービス向上に努めてきました。しかし、一方で職員に過度な責任と仕事量を与える弊害も起こり、ワークライフバランスをいかに保つかが重要な課題になっていきました。
そこで、2018年4月から川崎市は働き方改革の取り組みとして、川崎市働き方・仕事の進め方改革推進プログラム」を作成しました。同プログラムにより職員のワークライフバランスと市のサービス向上を両立させるのが大きな狙いです。川崎市働き方・仕事の進め方改革推進プログラムでは、36協定の厳守、ノー残業デーの実施、午後8時を超える残業の禁止などを細かく指導しています。
また、会議の進め方やシステムの導入など、業務効率化に向けた取り組みも推奨し、現場が実践していくよう促しています。そのほか、テレワークの施行なども推進されています。

大阪府の長時間労働抑制システム

大阪府では職員のPCを午後6時以降は強制終了し、長時間労働を抑制する施策を打ち出しました。以前から同様の施策を府内の市区町村の一部で行なわれていました。 残業申請を行わないと午後6時以降のPC使用が出来なくなります。
しかし申請の手間が増えて逆に仕事が終わらなくなるという懸念もあります。

まとめ

地方公務員の働き方改革も積極的に行おうという動きは今後も多くあるでしょう。有事や災害時に働かざるを得ない公務員に、働き方改革が浸透するには時間がかかりそうですが、着実に前進していることが分かります。

公務員の働き方改革

公務員の働き方改革

公務員の働き方改革

残業や長時間労働も多い公務員

一般的に公務員と言えば、定時で帰れて給料も安定しているというイメージがありますが、公務員の現状として長時間労働も当たり前、残業代はあってないような環境で働いている方も少なくありません。
平成26年度に総務省が実施した地方公務員の時間外勤務に対する実態調査からは、都道府県と主要市の常勤職員1人当たり時間外労働時間は約158時間という結果が出ました。なお、国家公務員は233時間、民間事業所は154時間です。
地域住民への説明会の開催が夜間や休日が多い事、税金の徴収業務や相談を受ける為の自宅訪問などが時間外労働の要因となっています。

そもそも労基法適用外の公務員

一般企業で働くサラリーマンと異なり、公務員はやむを得ない理由での長時間労働や休日出勤があります。民間で働く労働者の労働規則を定めた法律が労働基準法ですが、公務員の場合は労働基準法ではなく公務員の労働規則を定めた法律の勤務時間法、及び人事院規則に従って働く事になります。
そして、人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第16条では正規の勤務時間以外の時間において職員に勤務することを命ずる場合には、職員の健康及び福祉を害しないように考慮しなければならないと定めていますが、災害その他避けることのできない事由に基づく臨時の勤務については、この限りでない国会関係、国際関係、法令協議、予算折衝等に従事するなど、業務の量や時期が各府省の枠を超えて他律的に決まる比重が高く…と追記があります。災害発生や有事の際には、各省庁に指示を出す内閣府を始め、自衛隊、消防や警察、市町村役場などの地方公務員まで不眠不休で任務にあたる公務員も多くいます。
公務員である限り災害その他避けることのできない事由に基づく臨時の勤務においての長時間労働は避けられません。

公務員の長時間労働は是正されるのか?

公務員の働き方は、さまざまな法律で定められていますが、労働時間や時間外労働、休日労働などに関しては、国家公務員が人事院規則、地方公務員は人事委員会規則で定められています。これらの規則が改正労働基準法に準じる形で改正されれば、公務員の時間外労働は、民間と同様の上限に抑えられる可能性があります。

人事院が国家公務員の残業時間規制を改正

2019年2月1日には人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)として、正式に一部改正、改正労働基準法と同様、2019年4月1日から施行されることになりました。
具体的には、超過勤務命令(時間外労働)の上限時間を、1か月について45時間かつ1年について360時間までと規程を改正。他律的業務の比重の高い部署に勤務する職員に対しても、1か月について100時間未満かつ1年間720時間までという、明確な上限が設けられました。

まとめ

労働法の適用対象とならない公務員も、働き方改革がまったく関係ないということではなく、民間の動きに追随するように規定の改定を行なっております。 公的機関で働き方改革が浸透するには時間がかかりそうですが、着実に前進していることが分かります。
一方、公的機関の職員という公務員の業務特性から、テレワーク導入や副業解禁など簡単にできるものではないのも事実です。 柔軟な改革が続くか今後も引き続き注視しましょう。

運送業と働き方改革の事例

運送業と働き方改革の事例

運送業と働き方改革の事例

運送業は一般企業とは異なり、時間外労働の上限規制も適用時期も異なり、独自の働き方改革実現に向けたアクションプランを策定し取り組んでおります。運送業の働き方改革は建築業と同じく特殊特殊な事情があります。

運送業と働き方改革

運送業の構造改革を推進するのに、荷主の理解と協力を得るのは欠かせないことではありますが、それぞれの関係性を考えれば、運送企業からの積極的な要望の提言や交渉は難しいといえるでしょう。
こうした状況を打開して運送業の長時間労働を改善するため、厚生労働省は、2012〜2014年の3年間で、荷主企業・運送企業で構成される協議会の設置や、アドバイザーによる個別指導などを中心とした、労働条件改善事業に取り組んできました。

書面での荷物サイズ確認を周知・徹底

従来は運送事業者が配送可能なサイズを把握したうえで、適切な依頼を行っていましたが、担当者の移動などで荷物のサイズオーバーによる突発的なチャーター便への変更などが頻発していました。 荷主企業と運輸企業の勉強会を通じ、こうした課題を共有。解決に向け、サイズ確認の手順やサイズオーバーした場合の集荷手順を見直した書類を作成、関係者間で周知・徹底が図られるようになりました。
これまではサイズオーバーによるチャーター便を別途用意していたことで、ドライバーの労働時間延長が生じていた株式会社大村総業では、翌月から突発的なサイズ変更が0件に。ドライバー1人あたりの月間労働時間を、約40時間削減するのに成功しています。

積み込み作業の管理システム開発・導入

荷主の立場からも荷物の積み込み効率化を実現するため、同社は積み込み場所やドライバーの休憩室、運送企業の事務所にPC端末を設置。画面に待機場所や積み込み場所への移動指示が表示される管理システムを開発・導入しました。
同時に、6か所に分散していた倉庫を1か所に集約し、ムダな移動時間の削減や24時間対応による集荷の分散化にも取り組んでいます。 このシステムにドライバーの携帯電話を登録することで、タイムリーな指示を受けることも可能に、さらなる作業時間の短縮を目指し、専用車両の導入、従来必要だったシートのかけ外し作業を省略できたことで、1作業あたり30分の労働時間削減も実現しています。

車両の拘束時間短縮でドライバーの長時間労働を防止

ドライバー不足が顕著となった現在、それに歯止めをかけて安定した輸送を実現するため、両社は共同でドライバーの労働環境改善に乗り出し、定期的な連絡会を開催して課題の洗い出しを行いました。
その結果、積み込み作業が一定時間帯に集中していることで、ドライバーの待ち時間という長い拘束時間が生じていることが判明。これを短縮することがドライバーの長時間労働防止につながると判断した両社は、脱着式の荷台を8台用意、効率的にトラックに脱着させることで積み込み作業を分散させることに成功しました。
これによって、トラック1台あたりの滞留時間が30分短縮したほか、車両の回転率も向上、ドライバーの拘束時間短縮を実現するとともに、ドライバーの定着率向上も期待されています。

まとめ

荷主と運送業者と連携、協議を行うことで働き方改革の実現を行なっている企業も多くあるものの、まだ十分とは言えない状況です。運輸業の働き方改革は運送企業の努力だけでは業界全体の状況は改善出来ず、荷主企業の理解と協力が欠かせません。
荷主の理解を含めた働き方改革は必須であり、長い時間をかけた取り組みが欠かせません。 運送業の働き方改革が進まず、業界に参入する労働者人口が減少し続けてしまえば、荷主企業にとっても物流が妨げられる要因となります。こうした状況を荷主企業と運送企業で共有し、少しでも前進させることが重要となります。

運送業と働き方改革

運送業と働き方改革

運送業と働き方改革

トラックドライバーは、平均的な職業と比較しても長時間労働、低賃金の傾向があり、業務の改善が求められております。どのような取り組みが行われているのでしょうか

運送業と働き方改革

運送業は一般企業とは異なり、時間外労働の上限規制も適用時期も異なり、独自の働き方改革実現に向けたアクションプランを策定し取り組んでおります。運送業の働き方改革は建築業と同じく特殊特殊な事情があります。

改正労働基準法適用の例外

運送業は改正労働基準法に独自のアクションプランで取り組むことが明らかにされているだけでなく、時間外労働の上限規制も適用時期も、一般企業を対象にしたものとは異なっています。これは、時間外・休日労働が月100時間を超える労働者が多い運送業の特殊性と実態を考慮し、労働環境改善に時間がかかると判断されたためです。
厚生労働省の立ち入り調査によれば、トラック・バス・タクシーなどの運送事業所の8割以上で、労働基準法関係の法令違反が発覚したといわれています。激化する競争のなか、荷主のムリな要求を飲まざるを得ない運送業で、そのしわ寄せが労働者である運転手に転嫁されている状況となっております。
運送業の長時間労働を是正し、労働者の処遇を改善していくには、まず荷主の理解も含めた運送業全体の状況を改善していく必要があります

運送業に適用される働き方改革関連法案とは?

2019年4月1日に施行される改正労働基準法の一般則とは別枠で、2024年4月1日から適用となる、運送業に向けた働き方改革関連法案が制定されました。具体的には、一般則施行から5年間の猶予期間が設けられたほか、36協定による例外措置が、月平均80時間となる年間960時間とされました。
一般則よりも年間240時間多い上限とされたのは、運送業の特殊性が考慮されたものですが、宅配業を含めて年間720時間の上限適用検討に含みを持たせているのも特徴です。また直ちに取り組む施策として、2018年7月1日より国土交通省が行政処分の基準を引き上げました。
ドライバーの拘束時間・休日労働上限や、社会保険未加入などの法令遵守違反が認められた際の行政処分基準を厳格化した一方、ホワイト経営認証制度の創設が進められ、優良事業者がドライバーを確保しやすい環境構築も行われております。

働き方改革実現に向けたアクションプラン

2024年4月1日までに、年間時間外労働960時間超の事業所ゼロを目指すべく、働き方改革実現に向けたアクションプランを全日本トラック協会が策定し、実現のための要望を提言を行なっております。

  • 労働生産性の向上
  • 運送事業者の経営改善
  • 適正取引の推進
  • 多様な人材の確保・育成

まとめ

運送業と同様、改正労働基準法適用に、5年間の猶予措置が設けられている産業には建設業が挙げられます。しかし、5年後の労働時間上限規制が960時間にとどまる運送業は、ドライバーの長時間労働是正が容易ではないことがわかります。運送企業の努力だけでは業界全体の状況を改善できず、荷主企業の理解と協力が欠かせません。
運送業の働き方改革が進まず、業界に参入する労働者人口が減少し続けてしまえば、荷主企業にとってもタイムリーな物流が妨げられる要因となります。こうした状況を荷主企業と運送企業で共有し、今すぐにでも対話を進めていく必要があるでしょう。

働き方改革と農業

働き方改革と農業

働き方改革と農業

働き方改革の話題であまり出てこない農業ですが現状どのような取り組みを行なっているのでしょうか

働き方改革の影響

農業は天候などの自然条件に左右されやすいため、労働時間や休憩・休日の規制は今回改正の労働基準法でも適用除外とされています。 ただし、一定日数の年次有給休暇の確実な取得は農業でも必須項目です。

農業の働き方改革検討会

農業は働き方改革対応の必要性は他産業と比較すると高くない業種ではありますが、深刻な人手不足など問題が多くありました。
農林水産省では、人口減少社会の到来等に伴う人手不足に対応するため、5回にわたり農業経営者や有識者をメンバーとする農業の働き方改革検討会を開催しました。
働き方改革検討会といっても、政府が提案していた働き方改革関連法案の内容に沿ったり、それを農業にあてながら進行するなどというわけではなく、全く別の内容となっていました。その中で農業の働き方改革経営者向けガイドが策定されました。

農業の働き方改革経営者向けガイド

農業の働き方改革検討会では働き方改革を進めるための農業の働き方改革経営者向けガイドを策定しました。 そして具体的にどのようなステップを踏めばいいのかという方向性を示すための3つのステージを策定しました。

ステージ1:経営者が自らの働き方を見つめ直す

第三者から見て経営者の考えがわかるように、自らの働き方を見直し、改善を目指します。また、経営上の課題は、生産面積や作目の種類、それを流通させる販路、月や日毎の作業量や人員などを把握して、投資計画や財務管理が適切かどうか検討を行います。

ステージ2:働きやすい、やりがいがある実感できる職場を作る

従業員の労働環境を整え、年間の作業量の平準化や、労働法などに準拠した雇用を実現するだけでなく、給与体系の明確化や農業の特性を活かして労働時間を短縮することを目指します。

ステージ3:人材を育成し更に発展する

ここまでに決めてきた経営理念や目標をSNSなどを通じて発信して、農業に馴染みはないものの組織をデザインして経営者として活躍できる人材を獲得を目指します。

まとめ

働き方改革と農業の働き方改革の違いとして、働き改革のメインテーマは、長時間労働と正規と非正規の社員間格差の是正です。一方農業の働き方改革は、一言でいえば先進的な経営を見習ってより良い雇用を推進しようというものです。見習うべきことの多い優良経営体が経営手法等をオープンにすることが農業全体の底上げに大きな効果があるという考えのもとで検討、実行が行われています。

高度プロフェッショナル制度の事例

高度プロフェッショナル制度の事例

高度プロフェッショナル制度の事例

高度プロフェッショナル制度が成立しましたが、実際に導入に踏み切った企業など話題に上がりません。現状どうなっているのでしょうか。

導入に高いハードル

高度プロフェッショナル制度は本人が適用に同意する事や健康管理規定、年収目安など、導入に高いハードルがあります。 そのため積極的に導入する企業が少ないのが現状です。

多くは導入に否定的

企業側からは対象者の給与が平均年収の3倍を保証するとなると、給与水準が高すぎて導入は難しいなど、成果と労働コストのバランスの問題や、従業員への影響について成果だけを評価し、モチベーションを維持できるか非常に疑問、対象となる人は過労死基準を超える長時間残業をしているのが実態など、良い影響は及ぼさないという意見が多く、こうしたことから定着するとは思えない、目的が長時間労働の抑止なのか、労働生産性向上なのか、わからないといった不満も多く、導入に否定的なのが現状です。

裁量労働制で間に合っている

似たような業務体制として裁量労働制である程度対応できることも大きな要因となっております。金融商品の開発、証券アナリスト、研究開発は、現行の専門業務型裁量労働制でも対応でき、こちらの方が運用は簡単です。

高度プロフェッショナル制度導入までの流れ

労使委員会の設置

高プロ制度を導入するにはまず労使委員会を設置し決議で5分の4の賛成を得る必要があります。労使委員会はその構成員の半数が労働者を代表する者となります。労組がある場合はその労組が、ない場合は労働者の過半数を代表する者が指名します。

労使委員会での決議

労使委員会では導入する高プロ制度の内容を決議していきます。具体的には対象業務、対象労働者の範囲、健康管理時間の把握とその方法、年間104日以上、4週間4日以上の休暇の付与、対象労働者の選択措置、健康・福祉確保措置、同意の撤回に関する手続き、苦情処理の具体的内容、同意しなかった場合に不利益取扱をしないことなどを決議します。

届け出と同意

上記決議を行い、その内容を労働基準監督署長に届出を行い。対象となる労働者から書面で同意を得ます。

運用

実際の運用過程では対象労働者の健康管理の把握や決議どおりに休日を付与し、健康・福祉措置の実施などを行う必要があります。そして労使委員会での決議から6ヶ月以内ごとにその運用状況を労基署長に報告することとなります。また同意した対象労働者も対象期間内は同意を撤回することができます。

まとめ

対象職種や年収の規定、また導入までの流れからあまり高度プロフェッショナル制度は導入が進んでいません。しかし今後の動向次第で制度の緩和などの動向もある可能性もあり、今後も動向に注目する必要がありそうです。

高度プロフェッショナル制度の問題点

高度プロフェッショナル制度の問題点

高度プロフェッショナル制度の問題点

高度プロフェッショナル制度は、残業などの時間外労働の概念がなくなることから残業代ゼロ法案とも呼ばれております。残業代ゼロ法案と批判される要因となった制度の問題点について確認してみましょう。

労働制度の悪用が主な問題

正しく運用されるのであればこれほど問題にはならないのですが、これらの制度は会社側が誤った認識をして制度を悪用する場合もあります。

残業代の概念が無くなる

高度プロフェッショナル制度では、労働時間の規定がなくなるため、残業や時間外労働という概念自体がなくなります。 つまりどんなに時間をかけて取り組んでも成果がでなければ賃金が上がらないので、事実上残業代ゼロ法案になるのです。

評価基準が難しくなる

高度プロフェッショナル制度で対象となる研究職などの業種は、成果を出すのに時間がかかることもあります。 また、成果の評価は業種ごとに異なるため、賃金格差が生まれる可能性があります。

本当に働かせたい放題になるのか

高度プロフェッショナル制度が適用された労働者は、原則として労働時間や休日の概念がなくなり、労働基準法の適用が大幅に制限されます。従来、労働基準法は労働者を保護するために休日や残業の制限などが行われていました。しかし、高度プロフェッショナル制度が適用されるとこれらの制限が及ばなくなり、いたずらに長時間労働を強いられる可能性が生じます。極端な話、24時間を何日働いていても、労働基準法違反にならない可能性があります。
ただし高度プロフェッショナル制度が適用されたるためには、健康の確保措置などについての労使委員会での決議や、対象労働者本人が同意することが必要です。また、年間104日以上、かつ、4週4日以上の休日確保を義務があります。働かせ放題にさせないためには、これらのことを労使双方でどのように守っていくかが鍵になります。

対象業務は国会の議論がなく拡大できる

高度プロフェッショナル制度の対象業務は現状専門業務となっていますが、厚生労働省令で定める業務となっており国会の議論を経ずに範囲が拡大される可能性があります。

交通費や通勤手当の問題

高度プロフェッショナル制度の年収要件は1075万円以上とされていますが、その金額に交通費や通勤手当が含まれるのか。審議では入ると回答されており、その中に住宅手当や資格手当なども含む可能性があり、実質の年収が想定よりも低い労働者にも、高度プロフェッショナル制度が適用されやすくなります。

まとめ

高度プロフェッショナル制度は、活用法によっては、柔軟な働き方を実現して日本企業の生産性を向上させるきっかけとなります。しかし残業代の扱いをはじめとして、制度の運用に関して解決しなければいけない課題が多く、長時間労働を合法化するための制度と批判されても仕方がない側面も持ち合わせています。今後も動向に注目する必要がありそうです。

高度プロフェッショナル制度のメリット

高度プロフェッショナル制度のメリット

高度プロフェッショナル制度とは

働き方改革で当初かなり騒動となった高度プロフェッショナル制度(高プロ)。働き方改革法案施行からしばらく経ち話題に上がらなくなりましたが、改めて高プロについて再確認します。

高度プロフェッショナル制度のメリット

高度プロフェッショナル制度で期待されているメリットとして、少ない労働時間でありながら高い報酬が約束される可能性があります。

労働生産性の向上

日本の企業の労働生産性の低さは常々指摘されてきており、行政を挙げて労働生産性を向上し、国際競争力を高めようという動きがあります。現状の国内企業の傾向として、残業をすれば成果に関係なく報酬が支払われるため、仕事が遅い人の方がより報酬が多いといった問題があります。
しかし、高度プロフェッショナル制度においては、労働時間に報酬が左右されないため、効率よく短時間で成果をあげようとするモチベーションから、労働生産性の向上が期待できます。加えて、仕事が終わっていても退社することができない、といったような日本企業の悪習を断ち切る意味合いも含まれています。

ワークライフバランスの実現

企業人材の多様化の観点から、女性が働きやすい労働環境の整備に注目が集まっています。
そんな中、高度プロフェッショナル制度においては、出社や退社の時間が自由に決められるため、育児や介護などと仕事の両立が可能となり、ワークライフバランスの実現が期待されます。ただし、柔軟な働き方が実現されるのは一部の理想的な場合に限るとも考えられ、以下のデメリットに挙げる残業の横行とも表裏一体であるのが実情です。

子育てや介護などでオフィスワークが難しい人には適した働き方?

労働時間は賃金に反映されないという働き方ですから、考え方によってはメリットが大きいといえます。ただ、成果は出さないといけません。
一定の時間外に出て働かなくても、子育てや家事、介護の空き時間を利用して働くことができるため、子育てや介護などでオフィスワークが難しい人には適した働き方です。

無駄な残業代が不要

残業をすればするほど報酬が増える、という矛盾が解消され、企業にとっては人件費のコストカットを図ることができます。

成果と無関係な給与設定による不公平感が是正される

仕事の進行が遅い労働者の場合、必然的に労働時間が長くなります。成果が上がらないにもかかわらず労働時間だけが加算される従来の給与設定は、不公平感を生み出します。
高度プロフェッショナル制度は、労働時間ではなく成果物と給与設定が連動しています。仕事ができる労働者は、短時間で仕事を終了でき、それにより自由時間を生み出し、さらに給与も保証されます。労働時間による給与設定から生じる不公平感が是正されるというメリットが、企業と労働者双方に与えられます。

そもそもなぜ成立したのか

高度プロフェッショナル制度は、2007年にアメリカでも実施されているホワイトカラーエグゼンプション制度として法案が検討されました。
しかし、過労死の原因となるとして提出には至りませんでした。その後、見直されながら検討、廃案を繰り返し働き方改革の法案の一つとして、2018年に成立しました。

賛成派の主張「ワークライフバランスの向上」

賛成派は、働き方自体を変えることで労働生産性の向上だけでなく、労働者自身のワークライフバランスが向上する効果を挙げています。
テレワークや在宅勤務などで会社に出勤しなくても働くことができるワークスタイルの登場です。知的労働の部分が大きい職業であれば、自宅に居ながら仕事をしたり、通勤時間をずらして働いたりすることが可能になります。

反対派の主張「残業代ゼロ制度」

反対派の主張は様々ですが、要約すると合法的に残業代がカットされるため残業代ゼロ制度にすぎないのではないか、ということです。政府はそれに対し、厚生労働省の調査を元に裁量労働制においては、一般労働者よりも平均労働時間が短いことを根拠にしていましたが、このデータが不正確であったことが判明した経緯があり、正当性が揺らいでしまいました。

高度プロフェッショナル制度と裁量労働制との違い

裁量労働制は、労働時間の長さとは関係なく労働の質・成果によって報酬を定めることを可能にしている制度です。
高度プロフェッショナル制度との共通点として、報酬を労働時間ではなく、労働の質や成果物で評価を定めています。 対象職種や業種に違いはありますが、労働時間ではなく成果物によって報酬を定めることは2つの制度の共通点です。

残業代の有無

高度プロフェッショナル制度は、労働基準法の定める法定労働時間と休憩・休日の規制が一切適用されません。
一方裁量労働制は、労働時間の計算を実労働時間ではなく、あらかじめ定められた「みなし時間」によって行います。また22時以降翌朝5時までの深夜労働が発生した場合、深夜手当など割増賃金が発生します。

法定休日に労働した場合も割増賃金が発生します。一部残業代の有無に関して、高度プロフェッショナル制度と裁量労働制はその性質が大きく異なります。

対象労働者の年収の違い

高度プロフェッショナル制度では、年収1075万円を目安にした労働者に限って制度が適用されます。対象労働者の職種や業種も、 金融商品の開発業務、アナリスト業務、コンサルタント業務、研究開発業務に限定されています。

一方、裁量労働制の場合、年収要件は設けられていません。
対象職種や業務も、研究開発、出版事業の取材や編集、システムコンサルタント、公認会計士や弁護士、証券アナリストなど19業務、および事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査および分析を行う労働者と幅広いのが特徴です。

まとめ

高度プロフェッショナル制度は、労働時間でなく成果物で報酬を設定する制度で、対象は特定の高度な専門的職種や業種に限定されています。制度は労働基準法の適用外となるため時間外手当などは一切出ません。
しかし、労働者は自分で時間を自由に使って能力を存分に発揮できますし、企業はそれによって生産性が向上し、収益が改善する可能性も高くなります。

どう言われてもこの制度の最終的な目標は柔軟な働き方の実現と労働時間の見直しであるのには変わりないので、制度の効果的な活用を労使で考えてみるのはいかがでしょう。