同一賃金同一労働の問題点
同一賃金同一労働の問題点
同一賃金同一労働で正社員と非正規社員の格差の是正が働き方改革法案に盛り込まれております。しかし場合によっては不公平さと状況の悪化を招くケースがあります。
同一賃金同一労働とは
2020年4月から、中小企業は2021年4月から、。パートタイム・有期雇用労働法が施行されます。これは、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差を禁止する法律です。同じ企業の間で、基本給や賞与を含めたすべての待遇において、同じ能力や同じ貢献度を持つ労働者であれば、正社員とアルバイトの間で同一の賃金を支給すべきと定めています。厚生労働省はこの考え方を同一労働・同一賃金として、ガイドラインを定めています。
同一労働・同一賃金ガイドラインによれば、正社員とパートタイム労働者の賃金決定基準に違いがある場合の根拠として「正社員とパートタイム労働者では将来の役割期待が異なる」という主観的説明では不十分。職務内容や職務内容・配置の変更の範囲が同じ場合は、差別的な扱いをしてはいけないと定めています。賞与についても、会社への貢献度に応じた金額が支給される場合は、正社員とアルバイトが同一の貢献度の場合、同一の賞与を支払わなければなりません。
また、待遇に関する説明義務の強化も盛り込まれています。アルバイトで働く人は、正社員との待遇差の内容や理由について、事業主に対して説明を求めることが可能で、事業主にはその説明義務があり、説明を求めた労働者への不利益な取り扱いも禁止されています。
日本と海外の考え方の違い
フランスなどでは産業別労働協約により、勤める会社が異なっていても職務ごとに賃金が決まる仕組みがあり、結果として同一の賃金になります。
しかし、日本では労働条件を企業ごとに設定することが多く、同一労働同一賃金についても雇用形態の違いによる格差を解消するために同一賃金を支払うべきという考え方になっています。
予想される問題点
正社員の賃下げが行われる可能性
企業は総人件費の上昇を強く警戒しており、非正規社員の賃金が増えた分は、正社員の賃下げで対応しようとする企業が出てくる可能性があります。
賃下げといっても、基本給を減らすわけにはいかないので、各種手当てから削られる可能性があります。
手当には、役職手当、住宅手当、地域手当、通勤手当などさまざまなものがあるが、時代や環境の変化で必ずしも必要なくなっているものもある。20年4月以降は、こうした手当が見直しの対象となることも予想されます。
派遣などを受け入れる企業が減る可能性がある
社員へ支払う給与額が適正になったことにより、全体の賃金が上昇する可能性があります。そうなった場合、企業は非正規社員の数を調整する可能性があります。雇用を切られてしまった場合、派遣元の企業は常駐などの条件を受け入れてくれる顧客を新たに開拓する必要があり、その影響は労働者の稼働条件などにも及ぶことが予想されます。
罰則規定はなし
同一賃金同一労働は今回規定の変更をもし守らなかったとしても、特別な罰則は設置されない予定です。しかし、労働者側からの権利を主張しやすくなることで、体制を整えられていない企業はトラブルが起きやすくなってしまう可能性もあるため、日頃からしっかりと業務内容の規定には気を配っておくことが必要です。
まとめ
同一賃金同一労働は企業の負担が増加することになるため、何かしらのしわ寄せや、悪質な企業の場合労働環境の悪化に繋がる可能性もあります。今一度就業規則や法案を見直し、また法的な罰則はないものの良い方向に進むように動向を注視する必要があります。
介護業界の問題点
介護業界の問題点
介護業界の問題点
介護業界は近年の高齢化に伴い需要が高くなっております。しかし離職率や職場環境などで、何かと問題に上がることが多い業界です。
介護業界の現状
劣悪な労働環境
介護業界は、3K(きつい・汚い・危険)と呼ばれることが多々あります。積極的に保険外サービスを提供している一部の事業所を除き、多くの事業所は介護報酬を主な収入源として運営を行っていおり、そして、利用定員や入所定員など受け入れ可能な人数に制限が設けられている介護サービスの場合、事業所が得られる毎月の介護報酬には事実上の上限が存在します。
介護報酬を主な収入源としている事業所にとってサービスの質、介護者負担、人件費の3要素はトレードオフの関係です。
そのため、業務プロセスを大幅に改善しない限り、手厚いサービスを提供するためには一人あたりの業務量を増やすか、他事業所より低い賃金で多くの介護職員を雇用して対応するしかありません。
社会的評価の低い?
核家族化や平均寿命の伸長による介護期間の長期化など時代の変化に伴い、身内への介護が負担となるケースが急速に増加したため、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして介護保険が創設されました。 家族の代理というイメージが根強く残る介護職は、2000年4月の介護保険制度実施から20年近く経つ今でもまだプロフェッショナルとしての地位を確立することができていません。介護業界全体の質を高め、介護は誰でもできる仕事というレッテルを剥がさない限り、社会的地位の向上を図ることはできないのです。
深刻な人手不足
介護業界における人手不足は想像以上に深刻なもので、現役介護職員の90%が今の職場で人材不足を感じているといいます。
他業種に比べて給与が低く、心身ともに負担の大きい介護業界で就職希望者を集めることは容易ではありません。そのため、多くの事業所が資格や経験を求人条件から外し、一日でも早く人員を充足できるように努めています。
無資格者や未経験者を採用することは決して悪いことではありませんが、安易な求人条件の緩和や無理な採用が、サービスの品質低下や既存従業員の負担増加、職場の雰囲気の悪化、事故や虐待の増加などのリスクを高めてしまいます。
拡大し続ける需給ギャップ
介護職員の増加が要介護者や必要とされるサービス量の増加に追いついておらず。需要と供給のギャップは今後も拡大し続け、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年にはさらなる採用難が訪れると考えられています。
対策と取り組み
サービスの取捨選択を行う
どれだけサービスの充実を図ったとしても、介護保険において過剰とされる部分について介護報酬は発生しないため、職員を増員して対応させることはできません。介護理念に沿ったサービスを優先的に残すことによって、自事業所の魅力を損なうことなく労働時間の大幅な削減を図ることが出来ます。
腰痛予防やメンタルヘルスケアに取り組む
介護職員の離職理由をまとめたランキングで常に上位に入っている心身の不調。その内訳の大部分を占めるのが、腰痛とメンタルヘルス不調です。
介護業務従事者の多くが常日頃からストレスや腰痛を感じているといいます。また、一日に多くの身体介護を提供している職員ほど不調を訴える割合が高く、状態も重度化しているといいます。
身体的な負担を軽減させる最も簡単な方法は、移乗用リフトや寝返り支援ベッド、介護浴槽などの機械を導入することです。しかし、導入コストが大きな負担となる場合には、全職員に腰痛ベルトを配布し、介護側の負担が少ない介護技術の周知徹底を図るだけでも一定の成果を得ることができます。
メンタルヘルスケアでは、ワンオペと呼ばれる環境で働くことが多い職員はストレスや孤独感を特に感じやすいため、十分な面談時間を確保するように心掛けましょう。
まとめ
需要の大幅な増加に伴い、人材不足がより深刻になると予想されます。働き方改革を進め人材確保と環境改善を行い。働きやすい環境を作り出し、高齢者の増加に伴う需要に対応できるようにしましょう。
介護業界の働き方改革
介護業界の働き方改革
介護業界の働き方改革
内閣府が公表した高齢社会白書によると、日本の全人口の27.7%が65歳以上の高齢者となっています。しかも、その割合は年々増加し、2065年になるとおよそ40%に当たる2.6人に1人が高齢者になると予測されています。しかし、介護現場の職員はそれほど増える見込みがないのが現状です。
需要増かつ人手不足
現状、福祉施設の介護職員を中心に3K職場と認識され、きつい、きたない、きけんと言われ、介護職員は、労働条件が厳しく重労働、排泄介助やおむつ交換など、感染症のリスクも高く、腰痛など身体に危険な職業など、いいイメージはあまりなく、ここから先高齢者の増加する一方でやりたがる人が居ないのが現状です。
働き方改革の取り組み
ライフスタイルに合わせた勤務形態
介護の現場で人材不足が続いている理由としては、介護する必要のある高齢者が増えているだけではありません。介護を担当する現場の職員になろうとする人材そのものが不足しているのです。つまりこれは、介護の分野で働くことに魅力を感じる若者が少ないことを意味しています。介護労働安定センターが2017年に調査したところ、介護職を辞めた人の理由のなかに「結婚や出産・育児が重なると難しい」という回答が多くありました。つまり、介護職員として働く人を増やすためには、職員の労働時間や勤務体制への配慮を欠かすことはできません。
たとえば、24時間の介護が必要な現場では、夜勤の仕事は必要不可欠です。しかし、夜勤を行うとどうしても職員の身体にかかる負担は大きくなります。夜勤と日勤を繰り返す不規則な勤務体系をそのままに放っておくと、体調不良を起こして離職してしまうケースがあるのも事実です。貴重な人材を失うばかりか、介護職は激務という風評が広がり、新たな職員を見つけることが難しくなります。そこで、大切なのが職員のライフスタイルを重視した勤務体制を取り入れる取り組みが挙げられます。
また、介護の仕事は人間相手の職場であるがゆえに、残業をしなければいけないケースもありました。例としては帰宅時間になっているにもかかわらず、利用者の対応が終わっていないケースや次の担当者に申し送りができていないケースなどです。しかし、このようなケースは代わりの職員が他にいれば、無理に残業する必要はないといえます。そこで、帰宅時間になっても帰らない職員に対して、上司などが気を利かせて帰宅するように声をかける取り組みをしている事業所も増えてきています。
分業制の導入
介護職員の働き手がなかなか見つからないのは、職員1人当たりの負担が大きいという理由もあります。介護の現場では高齢者の食事、入浴、排せつといった生活を送るうえで欠かせない行為のほとんどのケアを行わなければいけません。そのため、介護職員の精神的、肉体的な消耗はかなりのものがあります。しかも、介護施設は年中無休で稼働しなければならず、もともと人手が足りない職場で働く職員の負担は相当なものがあるでしょう。特に問題視されるのが、本来の介護業務以外の業務をこなさなくてはいけない点です。
介護職員とは本来、利用者の身の回りのケアを行うことが本職のはずです。しかし、施設の状況によっては人手が足りないからという理由で、多くの事務作業やレクリエーション計画などを兼務しています。そこで介護職員の負担を軽減するための方法として始まっているのが業務の明確化に向けた取り組みです。具体的には、送迎や清掃といった介護職員でなくとも対応できるサービスについては、専門業者へ依頼することが挙げられます。
重要なポイントは、専門的な知識が必要な仕事とそうでない仕事をきちんと整理しておくことです。介護事業のサービスは大きく分けて入浴や排せつの介助などの専門知識が必要な仕事と、送迎や清掃といった専門知識がなくてもできる仕事の2つがあります。分業制を採用するときは専門知識がなくてもできる単純な仕事を外部へ委託するようにしましょう。
外国人人材
外国人介護職の確保に向けて、改正入国管理法が施行され、新たな在留資格「特定技能」の中に介護が追加されました。受け入れを希望する介護事業者からの申請が始まっており、順次現場で外国人介護職の受け入れが開始します。 ただし、外国人にとって介護施設が働きやすい環境でなければ、現場を支え、より良い介護サービスを維持することは困難です。
まとめ
これから高齢者の増加に伴い介護に関しては需要が大幅に増加すると見込まれます。働き方改革を進め人材確保と環境改善が急務となっております。働きやすい環境を作り出し、人材の確保に努めることが重要となります。
外国人技能実習生の受け入れできる職種
技能実習生受け入れの流れ
外国人技能実習生の受け入れできる職種
実習生はどの様な職種に就くことができるのでしょうか、また職種によって受け入れ可能な期間が異なる場合もあり確認が必要です。
移行対象職種とは
技能実習制度は主に3段階を想定し、入国1年目は技術を覚え、3年目までに技能を習熟、5年目には完璧にしているような形です。これを在留資格で区別しており、技能実習生は全員技能実習1号の在留資格を得ます。1年目に基礎的な技術を得たかどうかをテストしますが、このとき合格すると、技能実習2号に移行し、在留期間が更新します。そして、実技試験で合格すれば技能実習3号に移行され、5年間日本にいられます。このように技能実習2号、3号と移行できる職種を、移行対象職種と言います。
技能実習2号への移行対象はすべての職種となっており、3年間はどの職種に携わる人でも実績を残せれば、日本に滞在できます。技能実習3号に関しては一部の職種で移行が認められておらず、最大3年しかいられない技能実習生もいるなど不公平感があるシステムです。移行する際の審査があり、それらをちゃんとこなせるのか、しっかりとチェックされます。技能実習2号の1年目、2年目でもチェックを受けるため、明らかに技術がない人は帰国を余儀なくされる厳しいものです。
技能実習生の職種変更
人によっては途中で、事情が変わったり目指しているものに変化が見られたりすることがありますが、職種の途中変更はできません。その理由として、技能実習生を受け入れる際に実習指導計画の認定を受けなければならず、技能実習を行ったらそれを帳簿にまとめ、保管する義務があります。緻密な計画を立てることになるため、あっさり変更させるようなことは不可能です。 一方で、その職種、作業に関連することを実習に加えることは可能です。また安全作業、周辺作業も計画の中に入れなければならず、細かくそのあたりを定めることになります。1度決めた職種は二度と変更できないため、例えば、現状この職種が足りないので技能実習生を入れたとしても、入ってみたら別の職種の方が足りなかったという場合に、企業側はすぐに対応できません。
技能実習生を受け入れられる職種
農業関係
農業関係は2つの職種があり、主に田畑を耕して栽培を行う耕種農業、動物を育てて畜産物を得る畜産農業の2つです。この中で、耕種農業に該当する作業が、ビニールハウスなどを使って栽培する施設園芸、畑作・野菜、果樹の3作業で、畜産農業は養豚、養鶏、酪農の3作業となります。
漁業関係
漁業関係に関しても2つの職種となっており、漁船漁業と養殖業に分かれます。養殖業に関してはホタテガイ・マガキ養殖作業の1作業のみですが、漁船漁業に関しては8つの作業があります。かつお一本釣り漁業や延縄漁業、イカ釣り漁業の他、まき網、曳網、刺し網、定置網、かに・えびかごのラインナップです。単に漁業でワンセットなのではなく、細かな作業、漁によって細分化されています。
建設関係
関係別に分けて最も多い職種が建設関係の22職種です。建築大工やタイル張り、左官に配管、内装仕上げ、サッシ、防水など多種にわたります。建設関係は全体的に人手不足である一方、発展途上国では非常に需要がある分野だけに、建設団体の陳情もしやすいこともあって、職種は多いです。ただ、作業数に関しては1職種1作業が大半を占めており、作業数そのものはトータルで33作業にとどまっています。食品製造関係
食品製造関係は、こちらも細分化されており、11職種となります。主に加工業が中心で、水産加工は加熱性と非加熱性がそれぞれ職種として存在します。鳥の処理加工、牛豚食肉処理加工といったものやパンや惣菜の製造、医療・福祉施設給食製造も技能実習制度で認められている状況です。建設関係同様、1職種1作業が多く、水産加工において作業が細分化されているだけで、トータルで16作業です。
繊維・衣服関係
13職種が存在します。日本の昔からの産業である紡績や織布の運転、染色を始め、婦人子供服、紳士服、下着類の各種製造や寝具やカーペット、自動車の座席シートなども対象です。作業数は22作業を数え、紡績運転と織布運転で7つの作業があります。
機械・金属関係
全体で15職種存在し、鋳造や機械加工、工場板金、メッキなどの定番のものから、電子機器組み立てや電気機器組み立て、プリント配線板など、日本の工業を根本から支えるような職種まで勢ぞろいです。作業数は29作業です。
まとめ
技能実習制度によって、産業は成り立っているとは言われますが、基本的に景気に左右されやすく、現状は景気がいいために増えているものの、今後どうなるかはわかりません。ただ農業のように、生産者の高齢化が加速する職種では増え続けることが予想されたり、不法就労者を排除する動きが強まる建設関係ではちゃんと在留資格を持つ外国人を働かせるようにしたりするため、構造的に一気に減少する可能性は低いでしょう。
受け入れ企業は技能実習生の枠の上限を拡大するなど、様々な改善も行われており、悪質な企業を減らしつつ、ちゃんと制度を利用する企業を優遇する動きもあります。
技能実習生受け入れの流れ
技能実習生受け入れの流れ
技能実習生受け入れの流れ
何かと話題になる技能実習生制度、実習生はいったいどの様な形で入って来るのでしょうか。
外国人技能実習生の受け入れ
技能実習生を受け入れる方法には、二種類あり、その中でも団体監理型が一般的な受入れ方法となります。
企業単独型
比較的大規模の企業において、海外にある支社や合弁企業、取引先の従業員を日本の本社・支社・工場に受入れ、技能実習を実施するという方法です。この方法は、海外の所属企業の範囲が細かく定められていることと、実習実施者である日本企業が一社ですべてを負担しなければならないため、技能実習制度全体に占める割合は極少数となっております。
団体監理型
技能実習制度全体の約95%は、この団体監理型です。監理団体とは、事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体のことです。この監理団体が技能実習生を受入れ、加盟している企業等が技能実習を実施することになります。加盟企業等が複数あることで、費用の分散ができます。この点が、企業単独型よりも普及している理由と思われます。
団体監理型による外国人技能実習生の受入れ方法
監理団体を作るか加盟する
外国人技能実習制度を団体監理型で利用する場合に、非営利の事業協同組合を立ち上げ、その後に外国人技能実習機構に監理団体として申請をするという方法があります。この場合は、実際に技能実習生を受け入れるまでに2年以上の期間を要します。
外国人技能実習生を既に受け入れている監理団体に加盟し早く受け入れる方法もあります。
技能実習生受入れまでの準備
実際に海外の送出機関に出向き、候補者と面接などを繰り返し、選定を行います。
技能実習計画作成
技能実習計画を作成し、その技能実習計画が適当であるとの認定申請を受けなければなりません。この技能実習計画は技能実習生一人ひとりについて作成することになります。技能実習計画違反があった場合には、改善命令や技能実習計画の認定取消しの対象になるため、慎重に作成しなければなりません。
技能実習計画が認定されれば、在留資格認定証明書の交付申請をします。在留資格認定証明書が入手できたら、ビザ申請し、ビザが取得できたら、実習生の入国になります。
技能実習生の入国後
技能実習生を受入れた後、入国後の法定講習というものを、約1カ月間実施しなければならないのです。内容としては日本語、生活・専門知識…日本の生活慣習や職種別の専門知識、法的保護講習…入管法や労働法、その他にも企業によっては、会社独自の専門・作業用語、海外送金方法、電話の掛け方、病気の場合の表現の仕方などを研修で教えます。このような入国後の研修が終えると、ようやく技能実習がスタートすることになります。
技能実習後
技能実習後は、上記で説明した通り、基本的に本国に帰ることになります。ただ例外的に、引き続き日本に在留して、働くことは可能です。
しかし、かなり条件は厳しく、就労ビザの要件をクリアしなければなりません。
具体的には、大学(短大含む)を卒業していること、大学で学んだ事と業務内容が関連すること、就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)に該当する職種であることが条件となっています。元々技能実習制度を利用して日本に来た外国人は、日本で技能等を習得した後に、帰国した後に安定した職に就こう考える人が、ほとんどで、制度自体がその流れに沿って作られているため、技能実習後に日本で就労するハードルは、かなり高いと言えます。
まとめ
外国人技能実習制度を利用するには、しっかりと準備段階から受入れ態勢を整えていく必要があります。日本人の採用のように、簡単ではありません。 安価な労働力補充の手段として、技能実習制度を利用しようとすると、かえって余計な経費や手間が増えてしまいます。
技能実習制度の問題
技能実習制度の問題点
技能実習制度の問題
外国人雇用の一環として行われている技能実習制度、しかし多くの問題点があります。
外国人技能実習制度の目的
外国人技能実習制度は、主に開発途上国の労働者を一定期間日本で受け入れ、技術や知識を学んでもらい、本国の発展に生かしてもらうことを目的としており、本来は国際協力・貢献のための制度です。しかし現在では、日本の労働者不足を補うための制度という側面が大きく働き方改革の外国人雇用の一端を担っている状態です。
外国人技能実習制度は、雇用契約は実習生を受け入れる企業と行いますが、雇用関係に関する多くのことを監理団体が管理しており、簡単に転職などすることができません。 実習生の受け入れ企業の経営者が有利な雇用関係となります。 外国人技能実習生に長時間労働を行わせたり、残業代を支払わなかったりなどの違法労働を行っても、実習生は受け入れざるを得ない状況となってしまいます。 こうした状況が出来てしまうと、外国人技能実習生を受け入れると、日本人を雇用するよりも安く済むというイメージができてしまいます。
外国人技能実習生の問題・トラブル
技能実習制度では実際にいくつかの問題も起こっています。
失踪
大きな問題は失踪です。悪質なブローカーによって失踪が斡旋されることもあります。もっと稼げる、もっといい環境で働ける、甘い言葉に技能実習生はついていき、失踪という結末を迎えます。技能実習生は原則3年間同じ受け入れ企業に勤めるため転職という選択肢がありません。そのため、辛い現実に当たると母国に帰るか失踪してしまいます。失踪者の主な理由が低賃金です。思った金額と違った、労働の対価としての金額に不満がある等の不満が積もると失踪を選ぶ技能実習生が出てきます。
近隣住民とのトラブル
技能実習生は外国人であり、日本の生活習慣に慣れていません。ゴミ出しのルールがわからず近隣住民とのトラブルになるなどのことが多々あります。また仲間を集めて騒いだり、ゴミを投げ捨てるなどのトラブルも起こります。
事故に遭う、起こす
技能実習生が労働時間外に交通事故に遭ったり起こしたりし、実習を中断せざる負えないケースもあります。
問題の要因
外国人技能実習生関連の事件・事故が頻発するもっとも大きな原因は、実習生自身が当初考えていたよりも稼げないからです。
これは、技能実習生に対して不当な賃金設定をしている企業に問題があるケースが多いですが、雇用側と実習生側の認識の違いという面もあります。
また、受け入れる側の企業が労働法令を遵守しようとすると、実習生に基準となる労働時間以上の残業を強いることができず、実習生によっては稼ぎたくても稼げないという状況が発生することになります。
実習生はより高い収入を求めて資格外活動をしてしまったり、犯罪に手を染めてしまったりという事が発生します。
雇用側の制度の悪用
外国人技能実習制度は、農業や畜産などの業種にも適用されております。多くの場合、労働基準法に基づき労働契約を結ぶ際に労働時間や一日の休憩時間、休日などを規定しますが、農業、畜産と言った自然を相手にする業種は、この労働時間にそぐわないということで、適用除外業種となっております。
このため、一日8時間以上働かせた場合でも、時間外賃金を支払わなくても、農業に関しては労働基準法違反とはなりません。
この事実を逆手にとり、農業分野では、外国人技能実習生への残業代未払いの長時間労働が大きな社会問題となりました。
ある地域では、外国人労働者を長時間酷使して、雇用主である農家はいい暮らしをするといった現在の奴隷制度などと言われて、大きな批判を浴びたこともありました
トラブルを防ぐためには
労働環境を整える
上限を無視し長時間労働などは日本人と同等に違法になります。技能実習生だからといって、例外になるわけではありません。労働環境を整えることで、失踪などのトラブルを未然に防ぐことができます。
信頼関係を築きしっかりと対応を行う
他の従業員と同様に技能実習生と接することで信頼関係が築け、何かあった際一人で抱え込まず相談してくれるようになります。技能実習生の不安や悩みを察知し、トラブルを未然に防ぐことができます。
まとめ
日本全体の労働環境は、今後景気が回復していくにつれて徐々に改善される方向に向かう可能性が高いですが、外国人労働者をめぐるさまざまな問題は、さらに複雑化していくことが予想されます。 日本人にとってもけっして無関係な問題ではないので、どういった議論がされているのかをしっかりと注視する必要があります。
外国人技能実習生と働き方改革
外国人技能実習生と働き方改革
外国人雇用と外国人技能実習生
技能実習制度は、国際貢献のため、開発途上国等の外国人を日本で一定期間に限り受け入れ、OJTを通じて技能を移転する制度となってます。これらの制度と働き方改革の関連性とはなんでしょうか。
外国人労働者受け入れを拡大の背景
働き手の不足を補う
日本は少子高齢化社会が進み、労働人口が減少しています。介護職種や建設業等、専門的な技術が必要な現場の従業員の高齢化も企業が抱える問題の1つといえます。この事態に対応 すべく、外国人材の受け入れに前向きに取り組んでいます。
2017年11月に技能実習生法改正があり、外国人技能実習制度専門の機関、外国人技能実習機構が設立され制度の強化が図られました。また2019年4月には技能実習の上位資格である特定技能という在留資格が誕生し、より外国人材受け入れの幅が広がりました。
グローバル・ダイバーシティ
ダイバーシティの概念には、女性活躍やマイノリティの他にグローバル化も含まれています。国際化が進む中で、多彩な異文化が共存共栄するグローバル・ダイバーシティを取り入れることは、企業イメージにも繋がります。文化に配慮し、互いに尊重することが重要となります。
技能実習制度の本来の目的
本来の目的
日本は少子高齢化が進む中で、業界によっては人手不足に悩まされています。この人手不足の現状からも技能実習制度は、今や日本にはなくてはならない制度となっています。
日本の人手不足の一助となっていることに違いありませんが、技能実習制度の本来の目的は人手不足解消とは別のところにあります。
そもそも技能実習制度は期限が決まっています。技能実習生はその期間に日本で培われた技能、技術又は知識を学び、母国(開発途上地域)に移転すること、帰国後に習得した技能で国の発展に寄与するという国際貢献が目的となっています。
技能実習制度は単純労働が目的ではない
この制度の問題点として、技能実習生に低賃金で単純労働をしてもらえるという誤解があります。
先にも述べましたが、本来の目的は技能実習生の母国への技術移転を目的としています。
そのため、受け入れ企業は受け入れの際、技能実習生が実習を行うための技能実習計画を提出しなければなりません。職種によって実習内容は異なりますが、提出した技能実習計画に沿って行わなければなりません。安い労働力であるとだけ認識していると技能実習生を受け入れる際のトラブルのもとにもなりかねません。
まとめ
改正入管法など、新たな労働力の確保を期待する業種には歓迎されつつも、受け入れ体制の面などで課題が多いのも現状です。制度の内容を知り、外国人労働者との共生に向けて一歩を踏み出しましょう。
2019年の働き方改革振り返り
2019年の働き方改革振り返り
2019年の働き方改革
2018年6月29日に成立し、2019年4月1日をもって、適用開始された働き方改革法案。 2019年はどのような動きがあったかまとめてみました。
有給休暇の時季指定が一斉スタート
年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、付与した日から1年以内に5日以上を取得させることが義務付けられました。この労働者には、管理監督者も含み、 また、パートタイム労働者も週の所定労働日数や勤続勤務年数によっては対象になる場合があります。労務担当者は、誰が対象者なのかを正確に把握する必要があります。
有給休暇管理簿の作成義務化
また、企業には年次有給休暇管理簿の作成と3年間の保存義務が課せられます。管理簿とは、時季、日数および基準日を労働者ごとに明らかにした書類のことです。
有給休暇の時季指定に違反した場合には、30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
時間外労働の上限規制
労働基準法32条では、企業は労働者に、休憩時間を除いて1日8時間・週40時間を超えて働かせてはならないとされています。
36条でその延長について定めており、いわゆる36協定を結ぶことで時間外に労働させることができるようになります。これまでは、労働基準法の中にこの延長できる時間についての上限はありませんでしたが、今回罰則付きの残業時間の上限が定められます。
原則として月45時間まで、年間360時間までですが、業務上の事情がある場合は労使同意のもとで、月間100時間未満であること、2カ月~6カ月平均の全てがひと月当たり80時間以内であることを条件に年720時間以内まで上限を上げることができます。また、原則である月45時間未満を超えることは年6回までとされています。
労働時間の上限規制に違反した場合には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。大企業では2019年4月、中小企業では2020年4月から施行され、業種によっては上限規制が変わったり適用されないものもあります。
2020年以降の動向
時間外労働の上限規制、中小企業でも適用
働き方改革関連法案は2019年4月1日から施行されますが、中小企業に関しては1年間の猶予期間が設けられ、2020年4月1日から適用されます。
同一労働同一賃金
同一労働同一賃金が大企業では2020年4月、中小企業では2021年4月から施行されます。正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を無くすというもので、同じ仕事をしている人で正規と非正規で待遇に差をつけてはいけないとガイドラインで示されています。
現状では、正規と非正規の待遇差について聞かれた場合に、企業は必ずしも説明をしなければいけない義務はありません。しかし同一労働同一賃金が施行されたあとは、労働者から求めがあった場合には、企業は説明をしなければならなくなります。
労働者から問い合わせを受ける窓口は、労務担当者になることがほとんどであると思います。同一労働同一賃金施行後は、求めに応じて回答できる態勢を整えておくことが必要です。
まとめ
働き方改革の取り組みは来年度も引き続き行われます。引き続き動向を注視し、しっかりと対応していきましょう。
パート・アルバイトの働き方改革の問題点
パート・アルバイトの働き方改革の問題点
パート・アルバイトの働き方改革の問題点
同一労働同一賃金のデメリット
パート・アルバイトの働き方改革において最もメリットが大きい同一労働同一賃金。しかし会社の運用次第では正社員、非正規社員共に大きなデメリットにつながる可能性もあります。
残業時間の短縮で賃金面にデメリット
正社員やフルタイム、パートやアルバイトの形態に関わりなく、残業時間の上限規制によって、残業代を生活費に充てていた場合は、家計に影響が出てしまう可能性があります。 また、半強制的になってしまうような残業禁止という風潮が起こってしまった場合、持ち帰り残業の横行に繋がりかねません。そうなってしまうと、本来であれば残業で割増賃金がもらえていたところ、サービス残業で1円ももらえないということになってしまいます。
働き方改革によって、パートの労働時間や勤務日が増える可能性がある
働き過ぎの防止に関して言えば、残業の上限や休暇取得に関するルールができても、直接的な影響をほとんど受けないものと考えられます。
一方、正社員については、長時間残業をなくす、休暇を積極的に取得するという動きが、これから加速していくことになるでしょう。その中で正社員の仕事を減らして、パートタイマーにその仕事を割り振る、正社員に休暇を取得させるために、パートタイマーの勤務日を増やすなどの対応策が講じられるものと考えられます。
働き方改革によって正社員の残業が減り、休暇が増えると、その分だけ、パートタイマーの労働時間や勤務日が増える可能性があるということになります。
従業員数削減につながる可能性
賃金単価が上がるなら、その分の人数を減らすという方向性です。 現在よりも少ない人数で回すという方向に企業が傾く可能性もあります。
正社員の賃金水準を引き下げられる
正社員と非正規社員の給与水準を同じにしなければならないなら、その中間に両者を近づける、というものです。低い方に合わせてしまうと言う発想自体あまり良くないですが、同一労働同一賃金の実現の難しい企業では行われてしまう可能性があります。
まとめ
働き方改革における同一労働同一賃金は、パートアルバイトにもメリットがある反面、運用次第では思わぬデメリットになります。動向を注視しつつ企業がどのような対応を行っていくか、確認していくのも重要です。
パート・アルバイトの働き方改革のメリット
パート・アルバイトの働き方改革のメリット
パート・アルバイトの働き方改革のメリット
パート・アルバイトも働き方改革法案の同一労働同一賃金の枠内で働き方改革の対象となります。これによるメリットとは何でしょうか?
正規、非正規間の不合理な待遇差がなくなる
働き方改革では非正規雇用の待遇面の改善が行なわれることになっています。これはパート・アルバイトも対象となっております。同一労働同一賃金など元々派遣社員などの非正規雇用向けの施策のように報道されていましたが、パート・アルバイトも同じ非正規の枠で保証されます。では具体的にはどのようなことなのでしょうか?
同じ業務であれば同じ賃金が支払われる
契約社員やパートタイマーなどの非正規雇用労働者であっても、正社員と同じ業務を行っている場合は、同等の給与や福利厚生を受けるべきということです。 これにより、非正規雇用労働者の賃金が上がる事になります。
通勤手当が支給される
同一労働同一賃金による格差是正の為、また、契約期間やパートタイマーであることを理由とする不合理な差別を禁止しています。
非正規雇用であっても正社員と同じように企業は通勤手当を支払う必要が出てきます。
働き方の選択肢が広がる
様々な都合に合わせた業務形態を促進する事にもなりますので、テレワークなど多様な働き方に対応できると期待されています。
働き方改革がパート・アルバイトに与える影響
パートの雇用が増える可能性
残業時間の上限が設けられたことで、正社員やフルタイム労働者の労働時間が短縮されます。 これにより、パートタイム労働者の雇用が増える可能性があります。
有給休暇に対する意識が向上
パートだから有休がないと考える労働者や企業は、いまだに多いのが実情です。
しかし今回の法改正により、年次有給休暇が10日以上の労働者に対し年5日以上の有給休暇を与えないと、企業に罰金が課せられます。
働き方改革によって、有給休暇に対する意識が向上することが期待されます。
待遇面が改善される
社員並みの働きをしているにも関わらず、パートだからと低い時給で我慢している方も多いと思われますが、これから取り組みが進めば正社員と同様の待遇に改善されていくことになります。
まとめ
同一労働同一賃金は、本来の目的通りに実現すればパートアルバイト含む非正規雇用者の賃金アップにつながるかもしれません。
一方で、実現に至るまでには多くの課題があるため今後の動向にも注目する必要があります。
しかし、これまで労働市場にいなかった女性や高齢者の方にとっては、働くきっかけにつながる可能性があり、多様な働き方が実現できるメリットもある為、多様なワークスタイルの人が働きやすい環境づくりは今後重要になって行くでしょう。