同一労働同一賃金の事例
同一労働同一賃金では賞与も対象に
働き方改革の大きな柱の1本である「正規・非正規間の格差是正」を目指した「同一労働同一賃金」制度があります。さまざまなメディアで取り上げられているように、「同一の労働に従事する労働者には同一の給与を支給する」という考え方のもと、EU諸国に普及している考え方をベースに、現政権で法制定に向けて議論が進んでいます。
同一労働同一賃金ガイドライン案では、企業・働く人双方に影響が少なくない「給与」に関しての項目もあり、基本給以外の「各種手当」、福利厚生や賞与などの考え方も含まれています。
また、通勤手当などは、制度設定の目的が「通勤にかかる費用負担」なので、雇用形態で差をつける合理的な理由はありません。そのため、同一労働同一賃金では、非正規雇用であっても正社員と同じように通勤手当を支払う必要があります。
イケアジャパンの事例
大手家具メーカーであるイケアジャパンは、労働者を雇用形態関係なく『コワーカー』と呼び、同じ業務である場合は同じ賃金が適応される制度を導入しています。また同一の福利厚生を適用、労働時間の選択が可能となっております。
雇用区分の廃止によるメリット
雇用区分を廃止し、全社員を同一の身分にしたことにより、
給与水準が大幅にアップしたことにより、税法上の扶養控除がなくなってもそれをカバーできるだけの収入が見込まれることから、より長時間働きたい、新しいことにチャレンジしたいというコワーカーが増加し、
また、地域ごとに異なっていた賃金を全国一律にしたことで、地方への転勤希望がでるなど、働く場所の選択肢の拡大にもつながりました。
有期契約から無期契約に切り替わったことにより、コワーカーの間に安心感や安堵感が広がり、長期でのキャリアやライフプランを考えることができるようになり離職率も低下傾向になりました。
日本郵政の場合
日本郵政グループは正社員の一部の住居手当を廃止することを検討。 そのほかに正社員の遠隔地手当や寒冷地手当も削減。一方、繁忙期の年末年始手当のうち、年始勤務手当は非正規社員にも支給し、年末手当は廃止としました。 人件費の高騰を避けるため正社員の待遇を非正規社員に近づける事で同一労働同一賃金を実現しました。
非正規社員の賃金をあげた場合、総人件費が高くなります。会社の財源も限られているので、このように賃金自体が相対的に下がる可能性もあります。
同一労働同一賃金は、本来の目的通りに実現すれば非正規社員の賃金向上と格差の是正につながるかもしれません。
一方で、実現に至るまでには多くの課題があるため今後の動向にも注目する必要があります。