運送業と働き方改革の事例
運送業と働き方改革の事例
運送業は一般企業とは異なり、時間外労働の上限規制も適用時期も異なり、独自の働き方改革実現に向けたアクションプランを策定し取り組んでおります。運送業の働き方改革は建築業と同じく特殊特殊な事情があります。
運送業と働き方改革
運送業の構造改革を推進するのに、荷主の理解と協力を得るのは欠かせないことではありますが、それぞれの関係性を考えれば、運送企業からの積極的な要望の提言や交渉は難しいといえるでしょう。
こうした状況を打開して運送業の長時間労働を改善するため、厚生労働省は、2012〜2014年の3年間で、荷主企業・運送企業で構成される協議会の設置や、アドバイザーによる個別指導などを中心とした、労働条件改善事業に取り組んできました。
書面での荷物サイズ確認を周知・徹底
従来は運送事業者が配送可能なサイズを把握したうえで、適切な依頼を行っていましたが、担当者の移動などで荷物のサイズオーバーによる突発的なチャーター便への変更などが頻発していました。
荷主企業と運輸企業の勉強会を通じ、こうした課題を共有。解決に向け、サイズ確認の手順やサイズオーバーした場合の集荷手順を見直した書類を作成、関係者間で周知・徹底が図られるようになりました。
これまではサイズオーバーによるチャーター便を別途用意していたことで、ドライバーの労働時間延長が生じていた株式会社大村総業では、翌月から突発的なサイズ変更が0件に。ドライバー1人あたりの月間労働時間を、約40時間削減するのに成功しています。
積み込み作業の管理システム開発・導入
荷主の立場からも荷物の積み込み効率化を実現するため、同社は積み込み場所やドライバーの休憩室、運送企業の事務所にPC端末を設置。画面に待機場所や積み込み場所への移動指示が表示される管理システムを開発・導入しました。
同時に、6か所に分散していた倉庫を1か所に集約し、ムダな移動時間の削減や24時間対応による集荷の分散化にも取り組んでいます。
このシステムにドライバーの携帯電話を登録することで、タイムリーな指示を受けることも可能に、さらなる作業時間の短縮を目指し、専用車両の導入、従来必要だったシートのかけ外し作業を省略できたことで、1作業あたり30分の労働時間削減も実現しています。
車両の拘束時間短縮でドライバーの長時間労働を防止
ドライバー不足が顕著となった現在、それに歯止めをかけて安定した輸送を実現するため、両社は共同でドライバーの労働環境改善に乗り出し、定期的な連絡会を開催して課題の洗い出しを行いました。
その結果、積み込み作業が一定時間帯に集中していることで、ドライバーの待ち時間という長い拘束時間が生じていることが判明。これを短縮することがドライバーの長時間労働防止につながると判断した両社は、脱着式の荷台を8台用意、効率的にトラックに脱着させることで積み込み作業を分散させることに成功しました。
これによって、トラック1台あたりの滞留時間が30分短縮したほか、車両の回転率も向上、ドライバーの拘束時間短縮を実現するとともに、ドライバーの定着率向上も期待されています。
まとめ
荷主と運送業者と連携、協議を行うことで働き方改革の実現を行なっている企業も多くあるものの、まだ十分とは言えない状況です。運輸業の働き方改革は運送企業の努力だけでは業界全体の状況は改善出来ず、荷主企業の理解と協力が欠かせません。
荷主の理解を含めた働き方改革は必須であり、長い時間をかけた取り組みが欠かせません。
運送業の働き方改革が進まず、業界に参入する労働者人口が減少し続けてしまえば、荷主企業にとっても物流が妨げられる要因となります。こうした状況を荷主企業と運送企業で共有し、少しでも前進させることが重要となります。