実は激務? 働き方改革における公務員
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労働基準法は公務員には適用されない
労働基準法・労働安全衛生法の適用対象者は職業の種類を問わず、事業または事務所に使用され、賃金を支払われる者とされていますが、一部適用を除外されている人たちがいます。それは、公務員や船員などです。しかし、適用除外とされた公務員はまったく労働法制がないのかというとそうではありません。労働基準法は適用されませんが、公務員は国家公務員法、地方公務員法などによって別に定められています。
働き方改革関連法が公務員に与えた影響
働き方改革関連法案が提出されたことを受けて、人事院は国家公務員の時間外労働(残業)規制に乗り出し2019年2月には人事院規則が改正されることとなりました。人事院規則の改正内容は
- 時間外労働の上限規制:1か月について45時間、かつ、1年について360時間までと改正
- 時間外労働の上限規制(多忙な部署):1か月について100時間、かつ、1年について720時間までと改正
地方公務員においては各自治体の取り組みとして、時差出勤を実施している自治体が出始め、公務員の働き方改革が進められています。尚、国家公務員は2016年より一部フレックスタイム制が導入されています。
ブラックな面もある公務員
公務員は国や地方自治体に雇用されていますので、民間企業のように雇用主が潰れることはないため、失業を心配することなく定年まで安定して働くことができます。しかし公務員の働き方について定時で上がれるというイメージもありますが、こちらはイメージ先行と言わざるを得ないでしょう。実際のところ、公務員の仕事は忙しいです。例えば人事院規則15-14第16条を見ると、原則的には定時で仕事を終え、職員に残業させる場合は健康や福祉に配慮するようにすることという定めがあります。しかしこれはあくまで原則で、災害その他避けることのできない事由に基づく臨時の勤務が生じた場合はその限りではないと定められている訳です。
不夜城と言われることもある霞が関において、一部官僚が泊まり込みで職務に当たっているのも避けることのできない事由によって働いているのが現状です。特に国会が開かれている時には、政治家の答弁を作るために多くの時間を割くことになります。
また、災害時に消防庁や防衛省、警察庁や各地域の警察の職員等が不眠不休で働かざるを得ないこともあります。もちろん忙しいのは国家公務員だけではなく地方公務員も同じで、有事の際には、国民や市民、区民に奉仕するために職務を全うするために働いています。
地方公務員の残業時間問題
2015年度の都道府県と主要市における常勤職員1人当たり残業時間は158.4時間でした。残業時間が158.4というと月に13時間程度の残業時間ですから、多くはないように見えますが、総務省の同じ調査で民間企業の2015年度の残業時間が154時間だったことを考えると、民間企業より多い残業時間になります。(国家公務員は233時間)また地方公務員の出退勤時間については職員の自己申告制です。したがって総務省が調査した残業時間が過少に申告されている可能性があります。
公務員の新しい働き方
公務員にも働き方改革の影響は及んでいます。緊急事態や災害時の場合残業時間は多くなりがちでテレワークやフレックスタイム制等の新しい働き方をする必要が出てきています。
公務員のテレワーク
公務員でもテレワークも積極的に推進されています。 内閣官房IT総合戦略室・内閣人事局が公開した2018年度における国家公務員テレワーク実績等の結果によると2018年度の国家公務員のテレワーク実績は、前年と比べて以下のように増加しています。
- 2018年度のテレワーク実績:9,868人(前年より49%増)
- 2017年度のテレワーク実績:6,635人
データを見てみると職員総数に占めるテレワークの割合は18.3%でした。国家公務員がテレワークを通じて行っている仕事は資料作成が多いです。しかし、その他にも渉外業務や報道対応等、人と人とのやり取りが必要な仕事でもテレワークで行っていました。国家公務員の働き方は着実に変わってきていると言えるでしょう。
フレックスタイム制
国家公務員は2016年にフレックスタイム制が導入されるなど、働き方改革を積極的に推進しています。ただし、副業解禁においては「公務員には守秘義務、職務専念が課せられており、副業は信頼失墜行為にあたる」とされており、一部の例外を除いて未だに厳しく制限されています。
霞が関働き方改革推進チーム
国家公務員の中でも特に官僚の残業時間の問題は深刻でこのままでは大量離職に繋がり国の運営が成り立たなくなってしまう危険性があり、政府は霞が関働き方改革推進チームを策定し、対策に乗り出しています。それ以前にも下記の施策を行っております。
- リモートアクセスとペーパーレス化
- マネジメント改革
- 不要業務の見直しと業務負荷集中の回避
- 国会関係業務の改善
まとめ
国家公務員が働き方改革に積極的に取り組むなか、副業解禁や完全フレックスタイム制の導入などを進める地方自治体も少しずつ増えています。 働き方改革による労働環境改善の動きは、民間企業だけではなく国家公務員、地方公務員においてさらに活発になると予想されます。