2020/11/18

女性の社会進出の歴史と課題

女性の社会進出の歴史と課題

国際条約批准から始まった男女平等への取り組み

1985年に制定された男女雇用機会均等法は、国連が採択した女性差別撤廃条約を日本が批准するために必要となり、作られたものです。国連の働きかけと外圧がなければ、女性の社会進出は進んでいなかったかもしれません。 それ以前は、男女で採用条件や待遇を変えることが禁止されていませんでした。女性だけに結婚したら退職や30歳で定年などの条件を課して雇うことが、少なからず行われていました。

男女雇用機会均等法

この男女雇用機会均等法は募集や採用時に男女を均等に考えること、昇進や、定年・退職・解雇などについて女性であることを理由に男性と差別することを禁止するものです。かつては結婚や出産を理由に退職を迫られることも少なくなかったようですが、男女雇用機会均等の制定により、徐々に企業側の意識も改革されていきました。 均等法は、定年・解雇については性別による差別を禁止、募集・採用及び配置・昇進については差別を行わないことを努力義務としましたが、1997年の法改正でこれらも禁止になりました。

女性の社会進出はいつから?

日本の女性の社会進出は遅れているとよく言われますが、日本の女性の社会進出の歴史はどうなっているのでしょうか?

明治維新、西洋化がきっかけ

日本女性の社会進出は明治時代から糸工場で働く女性を皮切りに、教師・医師・看護婦といった専門職に女性が就きはじめるようになり、1912年~1926年の大正時代には、第一次世界大戦による経済成長で新分野の仕事が生まれ、女性の就労機会は広がっていきました。事務員・タイピスト・電話交換手・百貨店店員などの仕事に就く職業婦人が登場しました。しかし民法による家系制度による制約や学歴、身分による制約により平等とは言い難い状況でした。

本格的な整備は戦後から

1945年に終戦を迎えると、同年、婦人参政権が成立。1947年には賃金や就労時間などの労働条件に関する最低基準を定めた労働基準法が公布されました。1954年~1973年の高度経済成長期には事務職が大幅増加し、短時間労働で働くパートタイマーが出現。職場での男女格差が問題になると、その対策として1985年には男女雇用機会均等法が制定されました。

仕事と子育ての両立支援が本格化

1992年からは育児休業法が制定され、まずは常用雇用者に対して1歳までの育児休業が保障されました。これは、1989年に合計特殊出生率が過去最低の1.57を記録し、その後もさらに低下が続いたことから出てきた出生率向上策です。 その後も、育休の適用範囲拡大、育休中の給付割合の増加、短時間勤務や時間外労働の免除など、規定の内容が充実し、両立支援は手厚くなりました。

なぜ日本は遅れているのか

国連が採択した女性差別撤廃条約を批准するまで国策レベルでの女性の社会進出と就業支援に関して消極的でした。なぜここまで遅れているのか、そこには日本特有の事情がありました。

男女の役割分担意識

男女格差がなくならない要因として多く挙げられるのは、男は仕事、女は家庭という性別役割分担意識がいまだに根強いことです。 背景には夫が稼ぎ、妻は家事を担いつつ家計を補うという古いモデルを前提にした制度や慣習が会社や社会全体に残り、女性が正社員として働き続けることが難しい現状があります。
また、男女の役割分担意識は、女性を働きにくくさせるだけでなく、男性が家事に携わることも難しくします。 日本の男性の家事・育児時間が諸外国と比べても短いことは有名ですが、これは当人のやる気の問題以上に、男性の仕事が忙しすぎることや、家庭のことは女性がきちんとやらなければいけないという考え方に女性も含めて囚われているという問題が大き面があります。

女性活躍推進、正社員化の動き

政府も問題があることは理解しています。そうした中で働き方改革で長時間労働を是正しようとしたりしているわけです。 そして、企業に対するより直接的な働きかけとして2016年4月に女性活躍推進法を施行しました。これを受けて管理職に占める女性の割合を増やすことを目標にする企業が増えています。そのためにはまず管理職候補を育てなければなりませんから、一般職を総合職に、あるいは非正規社員を正社員に転換するという動きも出てきています。 また、少子高齢化による人手不足への対応としても、非正規社員の正社員化に取り組む企業が増えています。 なかでも、勤務地限定や短日・短時間勤務などを認める限定正社員」というコースを作って、これまではやむを得ず非正規の仕事を選んでいた人たちを呼び込み、つなぎとめようとするケースが目立ちます。

まとめ

日本において女性の社会進出は戦後以降大きく進みました。しかし、女性の社会進出にはまだ多くの課題や理解が必要な状態です。働き方改革においても女性活躍社会は重要な課題となっていますので、古い価値観の淘汰、さらなる施策の継続と理解が必要となっていきます。

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